ゲーテのすべて(田坂広志 「風の便り」 ふたたび  第83便より)


 ゲーテのすべて

 

 ドイツに、文豪ゲーテに関する諺があります。

  ゲーテは、すべてを語っている。

 その諺です。

 ゲーテは、膨大な書物を著し、無数の格言を残している。
 だから、誰かが、何か格言めいたことを思いついたときには、
 最後に、「ゲーテも、そう語っている」と言っておけばよい。
 かならず、ゲーテの言葉の中に、それに類したものがある。

 そういう軽口とともに語られる、諺です。

 しかし、この諺を目にするとき、
 改めて、深く思います。

  この言葉は、真実ではないか。

 人類の文明が始まって、数千年。
 その永い歳月のなかで、
 多くの優れた人々が、この地上に現れ、
 無数の素晴らしい言葉を残し、
 去っていきました。


  すべては、すでに語られている。


 それは、真実です。

 されば、
 我々に問われているものは、何か。


  行ずること。


 それだけなのです。

 

 2003年6月2日
 田坂広志


 

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